menu

発達障害の教科書TEXTBOOK

整理整頓と進路選択、金銭感覚を養うためのライフスキル・トレーニング

1.整理整頓が出来るためのサポート・トレーニング 

発達障害の子どもにとって、部屋の整理整頓を行うことが苦手なケースが多く見られます。好きなことばかりをして道具が出しっぱなしになってしまったり、自分の好きなおもちゃを買い集めてしまったりして部屋がちらかってしまうのです。仕事や学校で大切な書類はなくしてしまうのに対して、おもちゃのパーツや一見いらないように見えるものはどんどん溜めてしまい管理能力が不足していることがわかります。

整理整頓が出来ないといっても、この場合には発達障害によって理由が異なってきます。ADHD(注意欠陥多動性障害)の子の場合だと、不注意という特性がありますので、片付けに集中出来ないで部屋が散らかっていってしまいます。また気分によって片付けを中断してしまうことがありますので、部屋が片付くことがないままになってしまいます。自分では片付けないとと自覚しているものの、上手に片付けが出来ない場合が多いです。

ASD(自閉症スペクトラム)の子の場合だと、自分の中のこだわりがとても強いので、周りから見たらいらないと見えるものであっても大切な物であるためにどんどん溜め込んでしまい、必然的に部屋に物がどんどん増えていってしまいます。本人にとっては大切なものになりますので、片付けなければならないと思わないという点が他の発達障害の特性と異なります。

LD(限局性学習障害)の子の場合だと、部屋が散らかることは少なく片付けることも出来ますが、大切な書類や提出物を忘れてしまったりなくしがちになります。

発達障害の特性によって部屋が散らかってしまう原因は異なりますが、どの場合も大切なものをなくしがちであったり部屋が散らかってしまう可能性があります。発達障害の子どもの場合、自分1人できれいな部屋を維持したり整理整頓を定期的に管理することは難しくなります。子どものみに部屋の管理を任せていても、片付かないままどころか、どんどん部屋は汚くなっていってしまいます。ですので、必ず最初は親が片付けのサポートを行ったり、片付けやすい環境に工夫していくことが大切です。

 

では、部屋の整理整頓のライフスキル・トレーニングとはどのようにするのが良いのでしょうか?

この場合には、まず子供が日常生活の中で使っている道具を分類してわかりやすくすることが大切です。『文具』や『おもちゃ』といったように、1つの道具に対して1つの箱やケースを用意していき片付けやすい環境にしましょう。その際、ラベルや写真、絵など視覚から片付ける場所を判断出来るようにしておくとより良いでしょう。また、部屋にテーブルや引き出しといった混乱しやすいものは片付けてシンプルな構造にするのもおすすめです。発達障害の子どもにとって多くの片付ける選択肢があると、混乱してしまったり片付けが嫌になってしまうことがありますので、あくまでもシンプルに片付けやすい環境を整えていきましょう。 このように部屋を簡素化していくと、片付けやすくなるだけでなく、子供自身も片付けすることに対して意欲的になります。

また、家事を行うことも住環境を整えていくと取り組みやすくなります。掃除だけでなく炊事などを行う時も、道具を出しっぱなしにしてしまうとぐちゃぐちゃになってしまい手順がわからなくなってしまいますが、わかりやすく収納されていると、子供自身も片付けられるようになり、家事や炊事を覚えるチャンスも増えていきます。家事をする上で住環境のライフスキルはとても大切になります。

家事を子供へ伝えていく方法としては、文字や写真、絵で手順を示していきます。そして、掃除であれば掃く回数や拭く強さなどを具体的に伝えましょう。単に掃除の方法を伝えるだけでは、曖昧に感じてしまい掃除が面倒になってしまう可能性があります。『掃除をするんだよ』と伝えるのではなく『掃き掃除はこのくらいの強さで〇回繰り返すんだよ』とわかりやすく伝えていきましょう。

住まいや整理整頓といったライフスキル・トレーニングはきちんと身についていくと、自室の掃除や整理整頓はまず出来るようになります。ですので、将来的には一人暮らしをしても部屋を片付ける力がついていると、自分できれいな部屋を維持することが出来ます。しかし、一人暮らしをしていると仕事が続いて職場に泊まりがちになってしまったりと、部屋を片付けられない不測の事態が起きてしまう可能性があります。ですので、ライフスキルが習得したといっても、メールや手紙で細かく状況を確認しておくことが大切です。

 

3.正しい金銭感覚を身につけるためのサポート・トレーニング

一人暮らしやアルバイトをしだして、トラブルになるリスクが高いのが金銭感覚のライフスキルです。基本的には小学校時代からおこずかいが始まり、そのまま私たちは自分の持っているお金の範囲内でやりくりをするようになります。お金を手にすると全てを使ってしまうのではなく、ある程度は貯金に回したり、必要なものを買うお金としておいておいたりとバランスよく使えるようになっていきますが、発達障害の子どもは金銭感覚のスキルが育っていないとお金を使いすぎたり、人に騙されたりしてお金の使い方の粗さが目立ってしまいます。正しい金銭感覚を持つことは、将来安定した生活を送ることが出来ます。発達障害の子の場合、一般的な金銭感覚が育っていない事に加えて衝動的な欲求が強い場合があるので一旦本当に欲しいものかを考える力が育ちにくいことも考えられます。また、社会性が乏しいこともありお金は全て使っても良いものであると思ったり、LDなどの場合ではすぐに計算が出来ないので、うまく支払いが出来ないということもあります。

一般的な金銭感覚を持つことで、人から騙されて支払ってしまったり、友達に言いくるめられてお金を使ってしまうなど大きなトラブルに繋がりにくくなります。では、金銭感覚を育てるためのライフスキル・トレーニングとはどのようにすれば良いのでしょうか?

金銭感覚を養うためには、小さい時から親と買い物に行った時に一緒にお金を使う経験をさせることが重要です。お金を使ったり、貯金するといった経験が積み重なると、お金をどのように使っていくのが良いのかを知ることが出来ます。また、お金の使い方で成功体験を少しでも多く感じられることで、自分で金を管理することの楽しさも知ります。しかし、正しい金銭感覚を養うためには親のサポートが必要不可欠です。親が一緒に管理をしつつ、お金は無限にあるのではなく自分の範囲内で使うことが大切だということを伝えていきましょう。

 

■金銭感覚を養うためのライフスキル・トレーニング

 

おこずかい制にして子供自身が運用しやすいシステムにする

子どもにお金の大切さを知ってもらうには最初はおこずかいが最も適しています。おこずかいにすると自分の好きに使ってよいお金ですが、すぐに使い切ってしまうと後で欲しいものが出たときに困ってしまうので、徐々に我慢する力が付いていきます。単におこずかい制といっても、発達障害の子にお金の事を伝える場合には、買ったものノートに書いていったり、欲しいものを優先順位を付けて考えるようにしていきます。そうでないと、自分の欲しいものを衝動的に買ってしまう可能性があります。優先順位をつけることで本当に欲しいものかを認識し再考する時間が出来ます。

今までであれば、欲しいものは親におねだりして買ってもらっていたものが、自分のお金で買うことが出来るという自立にも繋がっていきますし、買い物には限度があるのだということも理解するようになります。おこずかい制は発達障害の子供にお金の大切さや使い方を教えるのに適していますが、計算が苦手なLDの子の場合だと計算について無理強いはしないようにします。今は電卓もありますので、そういったツールを使うことも良い方法だと教えていきましょう。

 

②買い物の手順を紙に書き実際に一緒に体験する

欲しいものを考え使うとなっても、お金はどこで払うのか、どのように売り場を回るのかを知らなければ買い物に出かけることが出来ません。ですので、まずは買い物の手順を紙に書き、スーパーなどで実際に一緒に親と買い物をしてみましょう。料金の計算方法や値札の見方、お金の支払いかたをきちんと教えていき混乱しないように伝えていきます。買う物と売り場をスタンプラリーのようにして、回るとわかりやすいです。お金の支払いに関しては、基本は現金で支払うのが良いですが、キャッシュレスになっていくこともありますので、電子マネーでもOKです。様々な方法で経験を積んでいきましょう。

 

③高額な買い物の場合は相談をするという約束を

年齢が上がっていくにつれて、買い物の値段も上がっていきます。小さい時からライフスキル・トレーニングを行っていると通常の買い物であれば、自分で考えて買い物が出来るようになりますが、高額な買い物の場合も持っているお金の限度いっぱいまでであれば購入してしまうことがあります。また、クレジットカードなどであれば、実際にお金が減っている実感が少ないために購入していまうことがあります。高額な買い物の場合には、一度親や周りの人に相談するという約束を決めておくのがベターです。金額を決めておいて、その値段以上であれば相談するようにしておくと、お金の金銭トラブルを回避することが出来ます。

 

金銭感覚を養っていくことは、お金の管理を自分で行い有意義に生活を送る上で大切になります。借金や人に騙されたりして辛い経験をすることになります。小さい時からライフスキル・トレーニングを行い、金銭感覚を養うようにしまましょう。

?

4.進路選択においてのサポート・トレーニング

長い人生の中で進路選択は大きな岐路になります。進路でのトラブルで多いのが、自分の進路を現実的に考えられず非現実的な進路を希望しこだわってしまったりそもそも進路自体考えたくないという子もいます。発達障害の子は自分で進路先を選べない子や、現実的に進路を考えられない子など様々で、周りの大人や親は、発達障害の子にとって最適な進路を考えられるようにサポートしていくことが大切です。

しかし、親が現実的な進路の話をしてもこだわりが強く聞く耳をもたず話し合いにならない場合もあります。また、学生生活で失敗することが続いてしまい自信が喪失しているために進路の話にまで至らない可能性もあります。

進路選択においてのライフスキル・トレーニングは小さい時から自分で判断することや考える機会を与えることが大切です。受験や就活といった大きな進路選択ではなく、小学校時代であれば習い事をするしないや、どんな習い事をしたいか、遊ぶ時間などについても自分で考えて決める機会になりますので、そういった時にまずは子どもの意見を聞くことからスタートしましょう。

子どもは衝動的に突拍子もない意見を言うことがありますが、決して否定しないでまずは子供の意見をしっかりと聞くことが大切です。そしてその後、本人の考えや成績、発達障害の状態等を考慮した上で親がまず進路についての見通しを立てます。そして、それを文字や絵にして将来について子供と話し合い最終的な決断は子供にさせるようにしましょう。親としてはつい口出ししてしまいがちですが、子供が決めたことに関しては口出しせずに見守るようにしましょう。小さな選択と決断するトレーニングを繰りかえすことで、自分の状況やなりたいことを十分に考えた上で、決断することが出来るようになります。

また、発達障害児への支援制度も積極的に利用するのも良いでしょう。発達障害の場合、特別支援教育などを受けることでその本人の得意分野を伸ばすことが出来、様々なスキルを身につけれますし、就職であれば障害に合わせた職場を見つけるサポートを行っている就労支援もあります。このような支援制度を上手く利用することで進路の選択肢を増やすことが出来ます。

進路選択では大きな場面を考えてトレーニングをしがちですが、日常生活でも多くの選択があります。1回1回の小さな選択を親子そろって一緒に考えていくことが、将来大きな進路選択を迫られたときにも、より現実的に進路について考えることが出来決断することが出来るようになります。

 

5.まとめ

整理整頓を行うスキル、正しくお金を使うことが出来るスキル、進路を現実的に考えてくスキル、どのスキルも将来の社会的な生活を送るのは必要不可欠です。これらのライフスキルは、小さい時からトレーニングやサポートを行っていくことで、徐々にスキルを身につけることが出来ますので、子供にとって無理のない程度に行っていきましょう。発達障害の子の特性や苦手なことをしっかりと把握した上でスタートし、多くの成功体験を積み重ねていくことが大切です。

 

児童発達支援管理責任者 本多 研治

この記事を書いた人
児童発達支援管理責任者 本多 研治

日本社会事業大学 社会福祉学部 卒業後、飲食店の店長や放課後等デイサービス事業所に保育士として勤務。
ドットライングループ入社後は児童発達支援・放課後等デイサービス かがやきのまちの立ち上げを経験。現在は障がい者グループホーム みんなのまち、就労移行支援・自立訓練 はじまりのまち、就労継続支援B型 ゆうきのまち、企業主導型保育園 みらいのまちなど、障害福祉・保育事業を管掌。

【資格】
社会福祉士、保育士、児童発達支援管理責任者、食品衛生責任者

各事業所 公式サイト
  • 夢のまち 訪問看護リハビリステーション
  • 夢のまち 訪問介護事業所
  • 夢のまち 居宅介護支援事業所
  • 夢のまち 家政婦紹介所
  • http://pj.dotline-jp.com/kibou/
  • かがやきのまち
  • はじまりのまち
  • ゆうきのまち
  • みんなのまち グループホーム
  • みらいのまち 保育園
  • スタークリニック