発達障害がある子どもを持つ親として、将来を考えると不安になるという声は多くあります。
発達障害は小学校や中学校では、通級指導教室や特別支援学級という形で苦手な分野の支援を行いますが、高校への進学はどういう選択肢があるのでしょうか?
高校へ進学を考えている場合には、発達障害がある子どもにとってどういった高校が適しているのかをきちんと把握しておくことが大切です。
今回は発達障害がある場合の進学について解説します。
目次
1,小学校、中学校には通級指導教室や特別支援学級が設置されている
発達障害の場合、未就学児には療育が行われることが多く障害の特性を理解しサポートやトレーニングを行っていきます。その後、小学校へ進学するといくつかの学習環境を選択できるようになり、その子の特性に応じた環境で学ぶことが出来ます。
小学校では、一般的にみんなと一緒に学ぶ『普通学級・通常学級』、普通学級・通常学級に在籍していながらも週に数時間別の教室で学ぶ『通級指導教室』、基本的には別の教室でその子のペースで学びながらも給食や体育、図工といった他の子と一緒に学べるものは一緒に行う『特別支援学級』、少人数で障害の特性から自立などを促していく『特別支援学校』の4つの選択肢があります。
特別支援学校は一定以上の障害がある子どもが通うことが原則となっており、普通学級・通常学級、通級指導教室、特別支援学級は小学校に設置されている支援学級になります。特別支援学校は障害に応じて手厚く細かいフォローやサポートを行っていけるのに対して、小学校に併設されている学級は他の子との交流を図りながら自分に苦手な部分はゆっくりとその子のペースに合わせて学習することが出来ます。
それぞれにメリットがありますが、小学校、中学校では発達障害の子は地域の学校に通いながら通級指導教室や特別支援学級で学習することが多くなります。
2,普通高校へ進学するには中学校のときに普通学級に在籍していないといけない
小学校では通級指導教室や特別支援学級で学ぶという選択肢がありますが、中学校に入ると高校受験を見据えた学びがメインになっていきます。中学校にも通級指導教室や特別支援学級があり、特性に応じて支援や配慮を行ってくれますが、問題になってくるのが一般的な全日制の高校に進学を希望する場合、特別支援学級では内申点がつかないために、高校受験のときに不利になってしまいます。ですので、全日制の公立高校への進学を考えるのであれば、普通学級・通常学級に在籍していなければ、内申点が少なくなってしまい受験で不利になってしまいます。
内申点を問わない学校や私立高校であれば特別支援学級でも大丈夫ですが、公立の全日制の高校の場合には内申点はとても重要になります。
特別支援学級といって支援級は、その子の特性にあったサポートを行ってくれますし、学生生活に大きなストレスを感じてしまう場合には、支援級に在籍することでストレスを緩和することが出来ますが、内申点に反映されないというリスクがあることを知っておかなければなりません。
3,一般的な全日制の高校への進学は可能?
発達障害の中でも知的な遅れがない発達障害の子の場合、知的水準は十分に全日制の高校で足りていることがあります。ですので、受験することは当然可能です。しかし、全日制の高校では支援級がある高校は現在はなく、小学校や中学校のような障害に応じた手厚い支援を受けることが難しいのが現状です。高校では中学校のときよりも更に自発的な活動が多くなると共に、対人関係やコミュニケーションもより難しくなっていきます。
思春期以降に発達障害の子どもはコミュニケーションがうまく出来ないことで、いじめに繋がったりや仲間はずれにされてしまったりして、鬱や不安障害といった二次障害を引き起こしやすくなります。そのため、学習面では高校へ進学することが出来たとしても、対人関係などで悩み不登校や中退をしてしまうケースも少なくありません。
知的な遅れがない発達障害の子どもの場合、全日制の高校を受験し進学することは可能ですが、充実した高校生活という視点で見ると様々な壁がありその子にとって楽しい高校生活を送ることが出来るかということは難しくなります。もちろん、その子の障害の特性によって大きく異なりますので、発達障害であっても全日制の高校へ進学しその後大学へ進学したり就職している方も多くいます。
しかし、発達障害の大きな課題であるコミュニケーション能力の不足がある場合には、高校生活が辛く悲しいものになる可能性があることも知った上で、進学について考える必要があります。
4,高校進学の際の選択肢とは?
発達障害があると診断されたときから、保護者は進学や将来のことがとても不安で心配になるでしょう。普通の高校へ進学してほしいという思いの反面、支援級がないために学生生活をやっていけるのかと不安になることがあると思います。先程紹介したように、知的な遅れがない発達障害の子の場合、全日制の高校を受験し進学することは十分可能です。
しかし、高校生活は勉強だけではなく友人関係も非常に大きなウェイトを占めています。そういったことを考えると、一般的な全日制高校以外の選択肢も考えて行く必要があります。では、高校の進学の選択肢としては、全日制の高校以外ではどのようなものがあるのでしょうか?
①特別支援学校の高等部へ通う
特別支援学校とは、身体障害や知的障害などの障害を抱えた子どもが、進学する学校で、小学校や中学校、高等学校に準ずる教育を行うと共に、生活上の困難な箇所を克服していき、将来様々な壁にぶつかったときに自分で解決出来るスキルを獲得していきます。多くは知的な遅れが目立つ場合に特別支援学校へ進学しますが、知的な遅れがない発達障害の場合は、判断が非常に難しくなります。特別支援学校では、一般的な高校では受けることが出来ない支援やサポートも受けることが出来るというのは大きなメリットです。また、高校を卒業したあとも、専門的な知識を有している職員が多くいますので、高校を卒業後の進路相談もしっかりと行うことが出来ます。
しかし、発達障害の場合だと知的な遅れが見当たらないことがあるので、特別支援学校へ進学することに対し『知的な遅れがないのに特別支援学校に進学するのは…』と抵抗がある保護者も少なくありません。また、自分自身が障害があったのかと、認識してしまい二次障害へ繋がってしまうこともあります。
進学を考えるときには、まず子どもの意見をしっかりと聞き、高校へ入学するには他にも選択肢があるということを伝えておくことが大切です。高校で自分が何をしていきたいか、どのような支援や配慮を受けたいかということに視点を置き考えていきましょう。
②通信制の高等学校へ進む
フリースクールなどの通信制の高校も1つの選択師です。通信制の高校であれば、毎日のように学校で集団生活をする必要もなく、少人数でしっかりと教育を行ってくれます。また、自分のペースに合わせて学習が出来るのも大きなメリットです。
通信制の学校の中には、発達障害の特性に理解がある高校もあります。自分の特性に沿った授業を行ってくれるところもありますので、チェックしておきましょう。通信制の高等学校を卒業すれば、大学へ進学したり、就職活動をスタートすることも可能です。
しかし、通信制の高校もきちんとレポートを行っていかなければならないので、簡単に単位が取れるのではありません。また、通信制の高校では不登校生などに特化したところも増えつつあります。中学校のときに発達障害の特性が原因で、二次障害や不登校になっている場合にはそういったところも選択肢に入れてみるのも良いでしょう。
③就職や職業訓練校へ進む
中学を卒業して就職や職業訓練校を考えることもあるでしょう。就職や職業訓練校のメリットとしては、すぐに社会に出ることが出来自分にあった専門的なスキルを身につけることが出来るという点です。自分がしたいことなどが絞れている場合や、好きなことが明確になっており、これを仕事にしたいという意思があるのであれば、就職し社会に出ることで自信へ繋がっていきます。
しかし、就職をしてもやってみたときに自分には合わなかったということも起こりえます。その結果退職してしまうと、肩書きとしては中卒になりますので、再就職が難しかったり意欲が削がれてしまい二次障害のリスクも高まってしまう可能性もあります。現在は発達障害の人に対して理解がある企業も増えつつあります。就職をするには周囲の理解が必要不可欠になりますので、就職の際に発達障害の理解をしてもらえるかどうかという点をしっかりと見定めていくことが大切です。
このように、発達障害の子が中学校を卒業後に進むことが出来る道はいくつかあります。それぞれメリット・デメリットがありますが、一番大切なことは本人がどのような進路を歩んでいきたいかということです。発達障害の特性やレベルも合わせて考える必要はありますが、本人の意思を十分尊重して進路を考えていきましょう。
4,まとめ
小学校や中学校のように支援級や通級指導教室がないので、高校への進学はとても大きな課題になります。親も本人もどの選択が正しいかは、選んで経験してからしかわからないので事前の情報収集や子どもの発達障害の特性でどの高校が適しているのかをしっかりと考えていくことが大切です。
どの選択においても、一番大切にするべきことは本人の意思です。本人の意思がしっかりとある場合には、自分が選んだ選択肢をやり遂げる意欲にも繋がりますし、それが原動力にもなります。まずは、中学3年生になるまでに卒業後はどうしたいか、何に重点を置いていくかを一緒に話合い、まとめておくようにしましょう。