メディアでも取り上げられることが多いダウン症。ダウン症の子供にスポットライトを当てている番組も多いので、名前を知っている人は多いでしょう。しかし、実際ダウン症の特徴や原因について正しい情報をご存知ですか?
さほど珍しくもないので身近で関わることも多いダウン症ですが、まずはダウン症について正しい知識を持つことが、ダウン症と私たちの共生への第一歩になります。今回はダウン症についての基礎知識を詳しく解説しますので、是非参考にしてください。
目次
ダウン症は生まれつきの障害
ダウン症という名前を聞いたことがある人は多いと思いますが、ダウン症については無知の方もいるでしょう。実際ダウン症について詳しい知識を持っていることは、ダウン症の方との関わり方やダウン症の方の立場になって考えるために必要不可欠なことです。まずはダウン症についてどのような原因があるのか、どのような症状が現れてくるのかを把握していきましょう。
ダウン症とは、正式には『ダウン症候群』と言います。ダウン症候群にある『症候群』という言葉は、ダウン症以外の疾患でも、耳にすることがありますが、はっきりとした原因は明らかになってはいないものの、症状としてはいくつか共通点がある場合に使用される言葉です。
ダウン症は以前は詳しい原因は明らかになっていなかったものの、症状としてはいくつか共通する点があったために『ダウン症候群』と名付けられました。現在は原因が解明されましたが、ダウン症候群という名前はそのまま使われています。今回の記事では『ダウン症候群』のことをダウン症として紹介していきます。
そもそもダウン症とはどのような障害なのでしょうか?
ダウン症は事故などの後天的なものであったり、手術や注射をして治るものではなく、先天的ないわゆる生まれつきの障害になります。
そのため、現在は手術や投薬をして治ることはなく、注射をして予防できるものでもありません。
症状や特徴については他の記事で詳しく解説しますが、ダウン症は知的障害を伴っていることが多く、非常にゆっくりとしたスピードで成長していきます。知的障害を伴っていることが多いために、一般的に知的障害の一種なのではという認識が多くありますが、ダウン症は知的障害ではなく染色体異常による障害というのが正しいとらえ方になります。あくまでも知的障害は、ダウン症の方の症状の1つにしかすぎません。
人によって症状は様々な形で現れることが多い
ダウン症は正式にダウン症候群と言われるように、症状としてはいくつか共通点があります。しかし、人によって表れ方は様々ですべてのダウン症の方が同じ症状という訳ではありません。ダウン症は染色体異常により起こることがわかっていますが、ダウン症の原因になっている染色体には膨大な量の情報が詰まっています。染色体は細胞分裂をする時に、遺伝子情報を伝える役割がありますがその染色体に何らかの変化が起きることで、ダウン症となり様々な症状が現れます。
例えば、筋肉や関節が普通よりも柔らかくなり姿勢を保つのが難しくなってしまったり、うまく話すことが出来ない、先ほど紹介したように知的障害が伴っている場合もあります。また、中には心臓疾患を抱えていたり眼が見えにくい、耳が聞こえにくいといった症状が表れる方もいます。ダウン症の方は一般的に低い鼻や小さな耳、吊り上がった目など共通する外見をしている方も多いことも挙げられます。
染色体は非常に複雑な構造になっているので、ダウン症と言っても人それぞれ症状が異なる上に、同じ症状であっても重症度が異なります。ダウン症は症候群といわれるように共通する症状があることは確かですが、全てのダウン症患者が同じ症状ではなく、ダウン症であっても共通の症状がない方もいれば同じ症状であっても軽かったり重かったりします。
ダウン症になる確率はどの程度?出産年齢が高くなると確率も高い?
ダウン症は先天的な染色体異常により起こりますが、ダウン症かどうかは妊娠中に疑いがあって産後ダウン症と確定する場合もあれば、妊娠中は何の予兆もなかったのに生まれてダウン症とわかる場合もあります。ダウン症をめぐっては、妊娠中に検査できる母体血清マーカーテストや羊水検査、絨毛検査がありますが、いずれも妊娠中にダウン症だと確定することは出来ません。ですので、最終的な確定診断は出産後になります。
ダウン症は全年齢を通して1000人に1人の確立で生まれることがわかっています。割合を見ると珍しい障害ではなく、どの年齢であっても誰であってもダウン症の赤ちゃんは生まれる可能性があります。しかし、母親の出産年齢が高くなるにつれてダウン症が生まれる確率は高くなっていく傾向があり、20歳では1667分の1の確率ですが、30歳では952分の1、40歳では106分の1、45歳では30分の1となっています。20歳の時に出産するのと45歳の時に出産することを考えると確率は56倍の高さになっています。母親の出産年齢が高くなるとダウン症の子供が生まれる確率が高くなるということは明らかになっています。
染色体の細胞分裂の異常が主な原因
では、ダウン症の原因は何なのでしょうか?ダウン症の原因は染色体異常が原因となっていますが、なぜ染色体に異常が起きるのかは解明されていません。
人の体はたくさんの細胞で構成されていますが、その核になっているのが染色体です。染色体はDNAとタンパク質で作られており、遺伝子を伝える役割りがあります。染色体があるために、親に似た姿を持つ子供が生まれてくることが多いのです。
その染色体は2組で1つのスタイルになっており、人は23組の染色体で作られていますが、動物によってはそれぞれ染色体の数が異なります。本来であれば、23組の染色体はきちんと2本になっているのですが、ダウン症の場合には21番目の染色体に変化が起こっており3本の染色体が出来てしまうために起こることがわかっています。そもそも、子供が誕生するには母親の卵子と父親の精子が結び付き、受精卵となり胎児へ成長していきますが、その際に染色体は分裂を繰り返しています。卵子と精子が出会った頃は、2本で1組の染色体が23組ずつありますので、卵子の染色体と精子の染色体で合計46本×2で92本ありますが、胎児が成長していく間も減数分裂を繰り返して必ずいつも23組になるように特別な作られ方をしています。
ダウン症の場合は細胞分裂の途中で何らかの原因があって、21番目の染色体だけ3本になってしまいます。現在はまだ、どのような原因があって染色体の細胞分裂が正しく行われなかったのかは解明されていません。染色体の細胞分裂の異常が原因とわかっているものの、なぜ異常が起きてしまうのか、年齢がなぜ関係しているのかは全くわかっていないのが現状です。
まとめ
ダウン症の基礎知識について解説しましたが、ダウン症は未だに多くの人からは知的障害の1つという認識が強くあります。見た目にも共通点が多いダウン症は、メディアでも多く取り上げられているために『ダウン症』という名前が先走っていることも事実です。また、親には母親側の原因ではないかと自分を責める方も多いですが、実際には染色体の細胞分裂が正しく行われなかったために起こることで、決定的な原因はわかっていません。
未だに解明されていないことが多いダウン症ですが、私たちはダウン症の子供達を特別な目で見るのではなく、ごく自然に接するようになることが共生していく上で大切です。そのためには、ダウン症についての知識を持ちどのように工夫すれば一緒に楽しく過ごすことが出来るのかということを常に考えていくようにならなければなりません。