ダウン症の人と共に歩んでいくためには、ダウン症について理解していくことが大切です。きちんと病気について理解した上で、私たちがダウン症の人に対して出来ることとは何があるのでしょうか?介助するときのポイントや対応の方法について解説します。
目次
ダウン症の人と私たちが健やかな日々を送るためにはどうすべきか?
染色体の細胞分裂が原因で発症してしまうダウン症。ダウン症の人は外見が似通っていたり、知的障害を伴っているなど共通点がいくつかありますが、人と関わることが大好きで、世話好きで明るい性格の人が多くいます。誰に対しても笑顔で関わっていくことが出来るのもダウン症の人の素晴らしい特徴でしょう。しかし、やはり筋肉や骨の発達が穏やかであったり、言葉を理解することに時間がかかることや、動作がゆっくりしていたりとどうしても同じようにしづらいこともあります。
では、ダウン症の人が困っている時や、私たちがダウン症の人に対して気を付けるべきことは何でしょうか?ダウン症の人たちと私たちが共に生きる仲間となるために、私たちが出来ることはたくさんあります。病気について理解した上で自然と心のバリアフリーが出来るように、参考にしてください。
ダウン症の人の体調や体力に注意を払う
ダウン症の人は、筋肉の緊張が強くないために同じ姿勢を保つことが難しく、同じ年齢の人に比べると体力がないことが多くあります。体を動かすことは大好きなので進んで運動などに参加しても、体力が少ないために休みながら参加することがあるということを理解しておきましょう。
ほどよい運動は健康には必要になりますが、どのくらい疲れているのか、休みたいのかは本人の判断を尊重することが大切です。
周りの人が勝手に『まだ出来るだろう』と判断して、無理をさせてしまうと倒れてしまう危険があります。
本来周りの空気を敏感に感じ取りやすいダウン症の人は、自分の意見を言いにくいこともありますので、『〇〇をするけれどどうかな?』とこちらから様子をうかがっていくことも介助のポイントです。
体力がないので初めから出来ないのではと勝手に周りが判断するのではなく、必ずどうしたいか、参加したいのかを問うようにしましょう。
そして、ダウン症の人と一緒に運動をする時には疲れ切ってしまう前に、こまめに休憩を挟むなど時間を短縮していくことも大切です。
また、ダウン症の人は体が柔らかいという特徴がありますが、柔らかさや体力の程度は非常に個人差があります。一定の姿勢を保つことが難しく短い時間は運動が出来る人もいれば、関節や筋肉がしっかりとしており走ったりジャンプをしたりすることが平気な人もいます。中には頸椎が弱く、激しい運動やでんぐり返し、トランポリンなど首に負荷がかかる運動が厳禁な人もいます。
体力や運動能力に関しては差が大きいので、その人の体調や体力に合わせて無理をさせないようにしましょう。
励ましの言葉や感謝の言葉はどんどん伝えていく
ダウン症の人の性格は非常に明るくユーモアがあり、周りの人を笑顔にする能力に長けています。人と関わることが大好きで、人が笑顔になることをするのが得意なダウン症の人は、当然人が笑顔になるのを見るのも大好きです。ですので、ダウン症の人には小さなことに対してもたくさん感謝の言葉や『ありがとう』と笑顔で伝えていきましょう。そうすることで、気持ちを高めエネルギーに繋がっていきます。
私たちもダウン症の人も同じですが、不得意なことやしたくないことを学んだり、取り組むとなるとどうしても気持ちが乗りにくくなります。ダウン症の人は特に一人で黙々と取り組むのが苦手な人が多いので、頑張っている姿を見ると『〇〇をしてすごいね』『丁寧に出来ているね』と励ましの言葉をかけていきましょう。頑張っている時に褒めてもらったり、上手に出来たことをほめていくと気持ちを盛り上げることが出来、やる気がアップしていきます。
理解しにくい内容は絵に表したり図にして工夫していこう
ダウン症の人は言葉を理解することや、動作にすぐに置き換えることが苦手な人が多いです。周りの人が言葉でたくさん説明しただけでは、いざ自分でしようとしてもどうしたら良いのかがわからなくなってしまい、動けなくなってしまうことがあります。ですので、内容が難しい場合や順序を一度に説明しなければならない時には、内容を絵に表したものをあらかじめ用意しておき、ダウン症の人へはその絵を見せながら説明していきましょう。言葉だけでなく絵や図になっているものを介して説明すると、頭の中で順序を整理することが出来、理解されやすくなります。
特にダウン症の特徴は人の真似をするのが得意な人が多く、周りの様子や絵を見ることに長けているという利点を生かして内容を伝えていくと、すっと入りすぐに行動に移すことが出来ます。このように少しの工夫をすることで、ダウン症の人は周りの人と同じように理解することが出来ますので、どのように工夫すれば理解されやすいかをしっかりと把握し、実践していくことが大切です。
座り込んでいるのはなぜかを考えてみよう
ダウン症の主な特徴にもありますが、ダウン症の人は床に座りこんで全く動かなくなってしまうことがあります。ダウン症児にはよく見られる光景ですが、実際に座り込まれてしまうと私たちはどうすれば良いのかわからないですよね。
座りこむという行為には、様々な理由によりダウン症の人は『座り込む』という行動を起こしているのですが、それをわがままや頑固だからという言葉で片付けてしまってはいけません。なぜ座り込んでいるのかという理由をまずは考えてみましょう。
何か訴えたい出来事があったのかもしれませんし、自分の思いを上手く言うことが出来なかったのかもしれません。ただ単に疲れて休んでいるという可能性もあります。原因を考えてから接することで、相互理解を深めるきっかけになり共生への一歩に繋がります。
気持ちを切り替えられる時間を出来る限り作っていく
自分がまだ続けていたいことや、してしまいたい場所まで到達出来ていない時に、次の行動へ移らなければならないということは、ダウン症の人にとって非常にストレスになります。次にしなければならないことがあるとわかっていても、どうしても決められた時間内に何かをするということが苦手な人が多いので、気持ちを切り替えることが出来にくくなります。次の行動がわかっていないのではなく、わかっていてもすんなりと気持ちを次へ向けることがしづらいために、つい座り込んでしまったり腕組みをして動かなくなってしまうのです。
そういった時には、無理に次の行動へ移させるのではなく、次の行動の楽しさを伝えていったり、『10まで数えたら次の行動へ移ろうね』と前もって伝える等わかりやすく行動を促していきましょう。どうしても、動かなくなってしまった場合にはそっとしておき『待ってるね』と安心感を与えてあげることも良いでしょう。
気持ちを切り替える時間をしっかりと与えてあげることで、ダウン症の人も心に余裕を持つことが出来るようになり、スムーズに気持ちを切り替えられる場合があります。
年齢にあった対応をしていこう
ダウン症の人は小柄で童顔の人が多いので、どうしても年齢が低くみられがちです。中学年や高学年になっても低学年と同じくらいの身長の人も多いので、周りの人は年下の子のように面倒を見てしまったり、接してしまうこともあるかもしれません。明るく人懐っこい性格のために、同い年であっても自分が年上のように感じてしまい、世話をしてあげないとという気持ちになることもあるでしょう。
しかし、同じ年齢であれば同じように接していくことが大切です。ついつい世話をやいてしまいがちですが、ダウン症の人と共生し社会生活を送っていくためには、自分で物事を考え行動出来るようになる必要があります。言葉や行動はゆっくりであっても、図案化したり順序立てて説明してあげるときちんと理解し出来るようになります。
もちろん、出来ないところをフォローしていったり、自分で考えて行動することが出来るように工夫してくことは大切です。しかし、初めから全ての介助をするのではなく、ダウン症の人が困っていたり難しい場合に必要な分だけ介助していくという認識が大切です。
まとめ
筋肉の緊張が弱いために激しい運動が出来なかったり、頑固になって座りこんでしまう、気持ちを切り替えるのが難しいなど、日々の行動をスムーズに行うことが難しい場合には、私たちのサポートが必要になっていきます。しかし、サポートをするといっても、全てを手取り足取り教えていったり助けるのではなく、出来る範囲は自分で行い、考えるように促していき、フォローが必要な時や配慮しなければならない場合にはしっかりとポイントを押さえてフォローしていくことが大切です。
もちろん上記に書いていることが全てのダウン症の人に当てはまるのではなく、個人差も非常に大きくなりますので、絶対にこのようにしないといけないのではないかと誤解しないようにしましょう。
大切なことは、目の前にいるダウン症の人が今何をして欲しいのか、どうすれば共に笑い合えるのかということを考えてサポートしていくことです。