発達障害の可能性がある場合に受ける発達検査の結果を聞くときに、『発達指数』という言葉を耳にします。
発達指数とは、子どもの発達の基準を数値として表したものを指します。
では、発達指数とは具体的にどのような目的があるのでしょうか?また、発達指数と知能指数の目的なども詳しく解説します。
目次
1,発達指数とは?
発達障害についての言葉を調べていくと『発達指数』という言葉を聞きます。発達指数とは、子どもの発達の基準を数値化して表したもののことで、Developmental Quotient を略してDQとも言われます。
発達検査では、現在の発達がどのくらいの年齢かを表す発達年齢を決められます。そして、その発達年齢を実年齢で割ったものに、100をかけた数字が発達指数となります。発達指数は0から100に数値化していますが、発達年齢と実年齢が同じ場合であれば100となります。基本的に対象年齢と同程度であれば100程度になります。そして、それを元に発達検査を行い、その結果として、その子どもの数値が決められます。
発達指数は子どもの発達の程度を数値として表していることは間違いありませんが、発達指数のみで子どもの発達の状態を判断してはいけません。子どもの発達は、その子その子によって非常に差が大きくあります。最初に早く発達をする子もいれば、ゆっくりと発達をしていく子もいます。ですので、発達指数が低いから、といって発達が遅く障害があるのではないか、と判断しないようにしましょう。子どもが成長は非常に複雑で、発達検査でわかる結果だけでなく、日常生活での様子なども合わせ総合的に判断して発達状態を把握することが大切です。発達指数は発達を客観的に知るという役割がありますが、発達指数のみでは発達状態に関して安易な判断はしないようにしましょう。
発達検査は様々な検査方法がありますが、代表的な発達検査である新版K式発達検査であれば生後100日から成人まで、遠城寺敷乳幼児発達検査であれば生後0歳から4歳8ヶ月まで測ることが出来ます。どの発達検査でも、検査結果では発達年齢を見つけ、総合的、多角的にその子どもの発達を捉えていき、どのような発達状態であるかを判断することが大切です。
2,発達指数を調べるには2つの目的がある
発達指数を知ることには2つの目的があります。
その目的としては
①子どもの発達状況を把握すること
②その子の発達に応じた適切な指導や支援をするためのヒントを得ること
になります。
発達指数を知るための、発達検査には様々な項目があります。粗大運動やソーシャルスキル、生活面、社会性といって項目において指数が出るものもあり、その子にとって何がこの先困難になるのか、苦手なことは何なのかと細かく知ることが出来ます。子どもの発達状況を把握することは、その先の療育や就学後の通級指導教室、特別支援学級などに進むときに、どのような支援や指導をしていくことで、困難なことを克服、改善していくことが出来るのかと判断することが出来ます。困難なことや、苦手なこと、経験が不足していることなどを把握していき、その子にとって最適な配慮や支援をするために、発達検査や発達指数は重要な役割があります。
発達指数を知る目的は上記の2点になりますが、注意点としては乳幼児において、発達検査の方法によっては指数が変動しやすくなります。実際に行動を観察して検査する実施式の発達検査の場合は、その子の障害の程度や環境、体調などに左右されてしまいますので、本来の実力を出すことが出来ず発達指数が少なく表される可能性があります。
そのためにも、発達検査の結果だけを見るのではなく、長期的に子どもの発達状況や知能検査の結果などを把握しながら、客観的、総合的に判断していくことが大切です。そして、総合的に判断した特性について受け止め、学校(幼稚園、保育園)や、福祉、家庭でしっかりとサポートしていくことが必要になります。
3,知能指数と発達指数の関係性とは?
発達障害の確定診断を行うときに、発達検査以外に知能検査も合わせて行うことがあります。子どもの発達が年齢に対してどの程度なのか、苦手や困難な部分を知り支援に活かすための発達検査と、認知の面を調べ知的な遅れが見られないかを調べる知能検査は、総合的に発達障害があるかどうかを調べるための方法の1つとしてポピュラーな方法です。
発達検査と知能検査の結果を数値として表しているのが発達指数と知能指数です。発達指数と知能指数は、どちらも対象となる子どもの発達の程度や困難なことなど、支援や指導のヒントを得ることが目的になりますので、発達障害の診断のときに行われたり、就学先や療育内容を決定するための参考資料になります。ですので、発達指数も知能指数も細かい目的の違いはあるものの、基本的な大きな目的は同じです。
しかし、知能指数と発達指数は調べる方法が異なっており、筆記用具などを使用して答える知能検査と、玩具などを使用して行う発達検査では対象年齢が異なってきます。一般的に、発達検査は0歳から行えるものが多いですが、知能検査の場合だと、文章や内容を理解出来るようになる3~4歳以上が対象になります。
ですので、発達検査による発達指数だけを調べるのか、知能検査による知能指数も調べるのかは、対象となる子どもの発達状況や年齢をしっかりと考慮した上に、保護者が検査を受けるかどうか、診断を受けるかどうかの希望を聞き決定されます。
発達指数も知能指数も、あくまでも発達状況や認知機能の程度を数値で表したものになりますので、この数値のみで発達障害の確定診断が降りるのではありません。先程述べたように、発達障害の確定診断には発達指数や知能指数に加えて、生育歴や行動観察など多角的にみて判断されます。発達障害は年齢ではしっかりと判断出来ないものもあり、長期的に成長の観察や把握を行っていき、その都度適切な検査や判断をしていくことが最も大切です。
4,発達指数を知るためにはまず相談を
その子どもが持つ障害の特性によって、困難なことやつまづきやすいことを知ることが出来る発達検査。発達検査によって、その子どもの発達状況を数値化して知ることが出来ますが、発達指数を知るためにはどうすればよいのでしょうか?
発達指数を知るための発達検査は、保健機関や異専門的な医療機関で知ることが出来ます。しかし、その前にまずは乳幼児健診で気になることや、発達の様子を伝えてみましょう。乳幼児健診では、子どもの体重や身長といった体の成長の検査に加えて、発達の遅れがないかを調べるスクリーニング検査が行われます。そのときに、気になる様子があれば、医療機関などで精密な検査を受けるように勧められることがありますので、地域のどの機関へ行けばよいか伺いましょう。
また、乳幼児健診以外で発達検査を受けたり発達指数を知りたい、と感じたときには地域の相談窓口へ連絡してみましょう。
子どもの発達を相談したい場合には
・地域の保健センター
・子育て支援センター
・児童相談所
・発達障害支援センター
が代表的に挙げられます。上記のような相談窓口へ直接出向いたり、電話をして相談したときに、発達について説明しましょう。必要であれば発達検査を受けられる専門の医療機関を紹介してくれます。
大切なことは、発達で気になることがある場合には、専門的な知識を持っている人に相談してみることです。早期療育の重要性が謳われているように、その子にとって困難や苦手なことがある場合には、早期に発見しサポートやトレーニングを行っていくことで、自立した社会生活や、困難なことへの対処法を学んでいくことが出来るようになります。発達で気になることがあれば、まずは相談することから始めましょう。
5、発達指数と療育手帳の関係
一定以上の知的な遅れがある子どもに交付される療育手帳ですが、発達指数も療育手帳の参考として加味されます。療育手帳は、知能検査で知能指数が70または75以下のときに交付される障害者手帳ですが、先程述べたように知能検査はある程度の年齢にならないと受けても正しい判断をすることが出来ないので、低年齢のときには発達検査による発達指数を参考にされることがあります。療育手帳は、発達指数に加えて、日常生活での能力をあわせ慎重に診断され交付されます。定期的に検査を行い障害者の等級を決定しますが、乳幼児では発達指数は年齢ごとに変化していきますので、毎年等級が変更になる場合があります。
発達障害の場合、知的な遅れがないと療育手帳は交付されません。しかし、療育手帳がなくても療育などの支援や指導を受けることが出来ますので、必ずしも療育手帳が必要というわけではありません。しかし、療育手帳には障害の程度や支援が必要なことを記されていますので、特別支援学級や通級指導教室などを申請を行うときに役立ったり、様々なサポートを受けることが出来るというメリットもあります。自治体によって検査方法や、必要な手続きが異なりますので、先程紹介した相談窓口に一度相談へ行ってみることがおすすめです。
6,まとめ
発達障害の確定診断には様々な検査や状況を審査されますが、その中で1つの基準となるのが発達指数です。発達指数は、あくまでもその子の発達状況を数値で表しただけですので、優劣を判断したり、発達障害の確定診断になることはありません。発達指数を知ることで、その子どもにとって最適な支援はなにか、どのようなことにつまづきやすいのかを知り、療育などの支援の参考にすることが出来ます。
発達は個人差が非常に大きくとても複雑ですので、気になることがある場合には保健センターや発達障害支援センターへ相談してみることが大切です。そして、発達に関して家庭、福祉、学校が長期的に発達について把握していくことが重要です。