よく耳にする発達障害という言葉。何気なく言葉は聞いているものの、実は発達障害といってもたくさんの種類があります。
発達障害は周りの理解が必要不可欠です。今日は発達障害について理解してもらえるように、わかりやすく解説します。
発達障害について知り、障害がある人と私たちが共に歩んでいくきっかけにしましょう。
発達障害とは何を指すの?
メディアなどでも取り上げられることが多い発達障害。発達障害とは聞いたことがあっても、実際にはどのような障害なのかは漠然としたイメージしかない方も多いですよね。
発達障害は、後天的ではなく生まれつき脳や中枢神経に何らかの異常が生じたために、発達や行動に偏りが生じてしまう障害を指します。
コミュニケーションが上手く出来なかったり、衝動的に行動してしまったり、特定のこだわりが強くなり意にそぐわないとパニックになってしまうなど特徴的な行動が伴います。
得意、不得意が極端に分かれており、そのことが原因となり周りの人との関わりが取りにくくなり孤立してしまうことが多く、社会的に困難な立場に立たされることも多くなります。特に発達障害は見た目では判断することが難しい上に、行動面でも『わがまま』や『乱暴』『身勝手』といった風に捉えられてしまい、『親のしつけが悪かった』『甘やかして育てたからだ』という批判を受けることもあり、家族を含め周囲からは勝手なイメージを持たれてしまい辛い状況に置かれる可能性もあります。
しかし、親のしつけや育て方が原因で発達障害を発症するのではなく、脳の機能障害によって先天的に引き起こされているので、手術を行ったり薬を飲んで治るというものではありません。ですが、発達障害は小さい年齢から環境や関わり方、特徴に応じた方法で関わっていく療育指導をしていくことで、特徴やこだわりが軽くなっていき社会性も培っていくことが可能です。
そのためには、周囲が発達障害についての特徴やこだわりを個性として理解した上で、一人の仲間として関わっていくことが大切です。
学生生活では孤立しがちになりますので、周囲の大人や教師が仲介役となって、関係を取り持っていくことが必要です。
発達障害の障害タイプ解説
発達障害といってもいくつかの障害に分かれています。
それぞれの障害によって行動や発達に差があり特徴も異なってきますので、発達障害だからみんな同じような行動をするということはありません。
また、発達障害は個人差が大きく目立った特徴がありつつも、人によって症状が軽かったり重かったりしますので、判断することが難しい障害でもあります。
それぞれの、基本的な特徴について解説しますが、必ず『この症状が強い=発達障害』と決めてしまわないように注意しましょう。
【知的障害】
知的障害とは知的機能に障害があることで『理解・判断・思考・記録・知覚』が全体的に遅れている状態を指します。
知的障害は学校の勉強などの知的な活動を行うために必要な能力が低くなっている障害で、診断には専門の知能検査を受けることで診断されます。
知能検査の結果IQ(知能指数)が70以下だと該当する可能性が出てきます。
しかし、IQが70以下だったからといってすぐに知的障害とは診断されせん。
適応能力も同じ年齢の時に比べると低いなど、合わせて顕著な症状が3つ以上でてきて、初めて知的障害と診断されます。
知的障害の人の特徴は以下になります。
・数の小さい計算も苦手である・計画を立てたり考える事が難しい
・単語や語句を適切に使い話すことが出来ない
・食事や入浴などでサポートが必要になる
上記のような特徴が出てきたら、知的障害の可能性が高くなります。
知的障害も簡単に治る障害ではありませんので手術や投薬治療で改善することは出来ませんが、しっかりと学ぶように環境を整えていき、丁寧にわかりやすく伝えていくことで自分で学ぶ意欲に繋がっていきます。
【自閉症スペクトラム】
以前は自閉症は1つの発達障害として認識されており、その他にアスペルガー症候群などの障害があると言われていました。しかし、実際にはアスペルガー症候群と自閉症は似た部分も多く、はっきりと境界線を引くのではなく、自閉症の中の1つの特徴として捉えられるようになってきました。これを自閉症スペクトラムと言います。
自閉症スペクトラムという考え方は、障害にそれぞれ境界線をはっきりとつけて区別するのではなく、広い意味として捉えていくという思いが込められています。自閉症は症状の差が大きく人によって特徴の表れ方が異なり、同じ人であっても大人になると特徴が目立たなくなっていたり、逆に大人になるまで気が付かない場合もあります。自閉症スペクトラムと言っても、様々な症状や特徴があることを知っておくことが大切です。
自閉症スペクトラムは3歳を目安に診断されることが多くなります。自閉症スペクトラムと診断するには専門の医師に診てもらい正式に診断されますが、自閉症スペクトラムと診断される子供の多くは以下のような特徴があることがわかっています。
①人と付き合うのが苦手
自閉症スペクトラムと診断される子供は、人と付き合うのが苦手な子が多いです。人と目を合わせて会話をしたり、集団で同じ遊びをしたり、誰かに言われなくても自然に決められた暗黙のルールに従っていくなど、自分でその場に適応していくことが難しくなります。他の人がどう思っているか、言葉に出さずとも理解できるルールなどを自然にわかるということは出来ません。また、自分の気持ちを相手に伝えることも難しくなります。
②コミュニケーションが上手く取れない
自閉症スペクトラムの人は人とコミュニケーションをとることも苦手です。言葉を覚えて臨機応変に会話をしたり、相手が言ったことを理解しづらく、同じ言葉であっても違う意味の言葉等は特に苦手で、2つ以上の意味を覚えることが難しくなります。このように、コミュニケーションを取りつつ関係を深めることがしづらいという特徴があります。
③こだわりが強く想像力が低い
自閉症スペクトラムの人は、『もしも〇〇だったら』という先を想像することが出来ないということも特徴の1つです。幼稚園から小学校あたりで遊ぶごっこ遊びをすることが出来ない子が多く、自分が〇〇の役をしたらこんな風だろうと頭で考えることが難しくなります。
また、こだわりも強くいつも同じ道順でしか歩くことが出来なかったり、食べるものはいつも一緒であったりと、1つの事に強い偏りがあることが多いです。このこだわりが通らないとパニックになってしまうので、柔軟に対応していくことが出来ません。
自閉症スペクトラムの大きな特徴はこのようになりますが、他の人とコミュニケーションを図ることが苦手で、中には知的な遅れが目立つ人もいます。ですので、まずは自閉症スペクトラムの特徴について把握した上で、日常生活で必要なサポートをしていくことが大切になります。事前に内容を知らせておいたり、大きな声を出さないようにするなどその人に適切なフォローをしていくようにしましょう。
【ADHD(注意欠陥多動性障害)】
低年齢で診断が付きやすい知的障害や自閉症スペクトラムと異なり、7歳程度の年齢にならないと診断がつきにくいのがADHDです。
ADHDは『注意欠陥多動性障害』と言い、注意を集中して持続することが難しい『注意欠陥』、じっとしていることが困難な『多動性』、自分の感情をコントロールすることが難しい『衝動性』という行動を起こしてしまう障害です。
子供は小さい時には、ADHDのような行動はよく見られますが、年齢が上がっていくにつれて自分の気持ちを抑制したり、待っていなければならない時間座っていることが徐々に出来るように成長していきますが、ADHDの子供はこの気持ちや行動を抑えることが出来ません。
ですので、みんなが座って授業を受けている時間なのにもかかわらず、1人立って部屋から出て行ってしまったり、我慢することが出来ずカッとした時に相手を叩いてしまったりします。
ADHDは知的な遅れが目立たないことが多いので、『わがままな子』『暴力的な子』という風にみられることが多くなり、対人関係で悩んだり孤立することも増えていく可能性があります。
衝動的な面も多動的な面も、本人は悪意がなく脳の機能障害になりますので、そのことをしっかりと理解サポートしていくことが大切です。
【LD(学習障害)】
発達障害の中でも、学習面に偏りがあるのがLD(学習障害)です。学習障害となると知的障害がありますが、全体的な学習面での遅れがある知的障害に対してLDは全ての学習面で遅れがあるわけではありません。
LDは『聞く』『書く』『読む』『計算する』という5つの能力のいくつかが不得意になっているという、学習面で大きな偏りがあることが特徴です。大きくタイプで分けると、文字を読むことが苦手な『読字障害』、文章を書くことが苦手な『書字障害』、数や推論が苦手になる『算数障害』の3つのタイプに分けられますが、あくまでも大きくわけた分類ですので個人差が大きくあります。算数や計算は得意であっても文章を書くことは非常に苦手であったり、文字を書いたり読んだりすることは問題ないけれど算数や計算は非常に苦手というように偏りが大きくなるものの、知的な遅れはありません。
LDもADHD同様に小さい年齢での診断は難しく、小学校などに入学しある程度授業が進んでいかないと気付くことが出来ない発達障害です。知的な遅れはなくある特定の学習分野だけしか苦手ではないため、周りの大人から『努力が足りない』『勉強を怠けているのではないか』と誤解されることが多く、批判されることが非常に精神的に負担になってしまいます。
LDの特徴としては
・文字の意味を理解しながら文章を読むことが出来ない
・本を読むことは出来るものの、ノートに書き写すとなると時間がかかったり
間違った字で汚くなってしまう
・明日、明後日、先週といった時系列をいつまでたっても考えられない
・数字の大小や順番を覚えることが出来ない
・簡単な計算や繰り上げを理解しにくい
となります。LDは知的な遅れはないですが、ある特定の分野が苦手になりますので、その分野をゆっくりと時間をかけてサポートしていく必要があります。苦手な分野を少しづつ伸ばしていけるように、小さな成長を見逃さず褒めて自信へ繋げていけるようにしていくことが大切です
まとめ
様々な特徴がある発達障害。私たちからすると発達障害という1つのくくりで考えてしまいますが、実際にはそれぞれの特徴や発達の偏りがあるので発達障害といってもどのような分野が苦手であるかを理解していくことが、相手と共に暮らしていきサポートしていくきっかけになります。
発達障害の多くは見た目では障害があると判断することが出来ません。そのため、周りからは『怠けている』『身勝手だ』と勝手に決めつけられ、叱責されたり批判されることが多くあり、精神的に意欲が失われてしまう可能性もあります。私たちは行動や言動だけで勝手に判断せず障害について理解し、共に歩んでいけるようにサポートしていくことが大切です。