自閉症スペクトラムや限局性学習障害、注意欠陥多動性障害など多くの発達障害がありますが、以前に比べると発達障害という言葉を耳にすることも多くなってきました。実は発達障害の子供や大人の数は、年々増加していっているのが現状です。
では、なぜ発達障害と診断される人は増えてきているのでしょうか?今回はその理由を調べ解説します。
目次
1、年々増加していっている『発達障害児』
子どもがいる家庭はもちろんのこと、仕事で子どもと関わることが多い保育士や教員、医療従事者などは、『発達障害』と診断される子どもが増えてきていることを顕著に感じているでしょう。実は発達障害と診断される人はこの20年でなんと7倍に増加しています。平成28年には発達障害の人の数は推定48万1千人(平成28年度厚生労働省調査)と言われています。現在は今まで気が付くことが出来なかった、又は見過ごされたまま大人になってしまい、大人になってから発達障害だったと診断されることも多く、大人の発達障害の関連本も多く目にします。このように、増加している背景としては大人でも発達障害と診断されることが増えてきたということが考えられます。
この48万1千人という数字は、子どもだけではなく全年齢を対象としていますが、子どもの発達障害の数も増加していることが考えられます。 発達障害の人の数が増加しているのは、日本に限ったことではなく海外でも同様で、発達障害と診断され早期療育や通級指導教室に通っている人は多くいます。発達障害がある子で学習面にサポートが必要な子は通級を行いますが、その数も右肩あがりでこの十数年の間に自閉症児は約3倍、注意欠陥多動性障害は約6倍、学習障害に関しては約8倍になっています。(文部科学省:通級による指導実施状況調査より引用)
では、なぜ発達障害の子どもは増えてきているのでしょうか?
2、発達障害が増えている理由とは?何が原因?
発達障害の診断をされる人が増加の一途をたどっていることに関してですが、単に昔よりも今の方が発達障害の人が増えているというわけではありません。発達障害という障害に関しては1933年にアメリカの精神科医が報告してから、日本では1973年に知的障害者に対しての療育手帳の交付、1989年に日本自閉症協会が設立、2005年に発達障碍者支援法を施行しました。このように、日本で発達障害に関してしっかりと考えられるようになったのは、ここ近年になります。少なくとも30年以上前には『発達障害』と言われることは少なく、多くの人は『変わっている子』『乱暴な子』『育てにくい子』などと言われていました。
しかし、発達障害という言葉が知られるようになり、書籍やメディアでも多く取り上げられるようになっていき、自閉症スペクトラムや限局性学習障害などについての理解も同時に得られることが増えていきました。つまり、発達障害と以前であればわからなかった子も、周りの理解が進み発達障害児として早期診断をされるようになったということです。早期診断や早期発見は、発達障害の子にとっては療育をすることが出来、ライフスキルやソーシャルスキルを身につけることが出来ます。ライフスキルやソーシャルスキルを身につけると、将来感じる可能性がある生き辛さをなくし、充実した人生を送ることに繋がっていきますので、現在は早期発見に重きを置いています。早期発見のために、小学校の教諭だけでなく、幼稚園や保育園の先生も気になる子や、発達障害の疑いがある子に関しては「一度相談に行ってみませんか」と保護者へ促すことになります。
『昔は発達障害の子なんてあまりいなかったのにね』ではなく、発達障害という障害の認知度が低く、知らない人が多かったために発達障害と診断されておらず診断される人数が少なかったということが大きな要因でしょう。現在は発達障害として多くの人に知られているために、数が多くなったと認識してしまうことが考えられます。実際には以前も現在も気が付くことが出来なかった発達障害の人を合わせると、さほど変化はないと言われています。しかし、発達障害を発見することや療育を受けることを気にしすぎて、曖昧な場合であっても発達障害と診断してしまう過剰診断も見られるので、診断は慎重に行う必要があります。子どもの様子を見たり、特性が当てはまるかどうかをしっかりと周囲の人も考えていくことが大切です。
3、発達障害と診断されることが子供にとってプラスになるかが大切
誰でも自分の子どもは健康で、優しく、幸せに成長して欲しいと願うものです。子どもが出来る限り苦労や悲しむことが少なくあって欲しい、友達と楽しく過ごして欲しい、などささやかでありながらもとても難しい願いを祈ります。以前は自分の子どもが発達障害と診断された時に『うちの子に限って発達障害だなんて!』と剣幕になる姿がありましたが、現在はそういう姿よりも『やっぱりそうか…』と安心する親が増えています。
障害という現実を受け入れることは安易ではありません。特に発達障害の場合には特効薬や治療があるわけではないので、一生かけて障害と付き合っていくことになります。そういった事を受け入れることが出来ず、発達障害ではないと頑なに認めない保護者もいましたが、現在は発達障害と診断されたために、療育機関などの支援を受けることが出来る安心感や、今まで育てにくさを感じていたことが、障害が理由だったと自分を責めることが少なくなったという意見もあります。
実際に発達障害と早期発見をすることは、賛否両論あります。先ほど紹介したように、早期発見することで気持ちを切り替えることが出来たり、周りに理解を求めることや、自分の努力不足ではなかったと感じることが出来重荷が取れたという保護者もいますが、診断に対して失望してしまったり、特別な目で見られてしまうと心配したり不安になる保護者も多くいます。大切なことは、その子にとって自分の特性や特徴を個性として生かすことが出来るようには、どんなサポートが必要かを考えることです。環境を整えたり、小さい時から一緒に生活面を工夫することで、将来生き辛さを少なくすることが出来るのであれば、診断を知る必要はありません。しかし、専門的な療育であったり支援施設を通してスキルを身につけることがプラスになるのであれば、利用することは非常に効率的です。
現在は以前に比べると、発達障害について理解がある期間や学校が増えてきています。サポートを幼稚園や小学校から手厚くおこなってくれるところもありますので、子どもの特性をしっかりと見つめなおし、子どもにとって必要なサポートは何かを総合的に判断することが大切です。
4、まとめ
年々増え続けている発達障害の人数ですが、その背景は『発達障害』という障害の認知度があがったことになります。認知度があがることで、過剰診断や早期診断に対して疑問を持つ意見もありますが、しっかりとサポートやトレーニングをすることが出来るというメリットも多くあります。 そうした面を踏まえて、子どもの特性を見つめどういったサポートやトレーニングが必要か、専門的な人による助言が必要かなどをしっかりと見極めることが大切です。
サポートが厚くなり、発達障害の強い特性を緩和することが出来たり、発達障害が多くの人に理解してもらい、生き辛い、苦しいと思う人が未来では減ってきたと感じられる世の中にするためには、発達障害について少しでも多くの周りの人が障害の特性を知り理解することが大切です。