発達障害を持つ親にとって小学校への就学で最も悩むのが、小学校での学習環境です。
現在、小学校には『普通学級・通常学級』『通級指導教室』『特別支援学級』があり、それぞれ支援方法が異なります。どの学級への就学を選ぶかによって、その子の将来にも大きく関わっていきます。
しかし、これらの学級はどのような違いがあるのでしょうか?
今日はそれぞれの学級の解説と、発達障害の子どもが学習環境を選ぶときのポイントを解説します。
目次
1.小学校に進学するにあたって考えるべき『学習環境』
幼稚園や保育園では、個別に対応してもらっていたり、パニックになったときにもクールダウンをしてもらうことが出来ていたものの、小学校に進学するとなると集団行動が主となる上に、学習内容も増えていきますので、発達障害の子どもには負担が大きいケースがあります。
集団行動が多い小学校では発達障害の子どもは周囲に馴染めなかったり、環境の変化で大きなストレスを感じてしまったり、学習面でついていけない等悩みが増えていくことがあるので、小学校へ進学するまでに学習環境を考えることが大切です。
現在、小学校には発達障害や身体障害、知的障害といった障害を抱えた子どもの特性に応じた学級や個別指導を行うための学級が設置されています。
そのため、発達障害があっても安心して小学校へ進学することが出来ます。しかし、小学校でも進学する際には、どのような学級へ就学するかを考える必要があります。では、発達障害の子どもが選択することができる学級とはどのような学級があるのでしょうか?
2.就学には『通級指導教室』『特別支援学級』『普通学級』『特別支援学校』の選択肢がある
小学校に就学するにあたって、ポイントになるのが学習環境を選ぶことです。発達障害の子どもは、こだわりが強かったり、集団行動に馴染めなかったりとその特性から学校生活に生きづらさを感じてしまうことがあります。特に授業中であれば、注意欠陥多動性障害(ADHD)の子は集中力が持続しにくいために授業を妨害してしまったり、立ち歩いて周りの子をかまいにいってしまうなど、本人だけでなく周りの子にも影響をしてしまうことがあります。
そういったときに、本人の特性に応じ落ち着いて学べる環境を用意してあげることで、その子の特性を伸ばしてあげることができます。学生生活において学びの環境を整えてあげることは、将来的にも非常に大切になります。では、発達障害の子にとってどのような学習環境の選択肢があるのでしょうか?
『普通学級・通常学級』
『普通学級・通常学級』はいわゆる一般的なクラスの1つで、地域にある学校で大勢の子どもが通う学級のことを指します。1クラスは約30名~40名程度で、子どもたちが一緒に一緒の授業を受けます。『普通学級・通常学級』でも、発達障害がある子どもなどで個別指導計画がある子には、障害の特性を理解し配慮することがあります。教諭の加配や、授業中での配慮(障害の特性に応じた機器の使用など)を行い、みんなで一緒に学ぶ環境を整えていくことができます。また、『普通学級・通常学級』では、大勢の子どもたちが一緒に学んだり学校生活を送っていきますので、コミュニケーション方法を学んでいくことも大きなメリットの1つです。
『通級指導教室』
『通級指導教室』とは『普通学級・通常学級』に在籍していつつも、支援が必要なことがある場合に、通級指導教室に通うことを指します。週に何時間か別の教室で、その子の障害の特性に応じた学習を行う事ができます。子どもの特性や学習内容によって、通級指導教室に通う時間は調整されます。『通級指導教室』も基本は『普通学級・通常学級』になりますので、給食や体育など他の子どもたちと一緒に参加出来る授業が多くなります。
『特別支援学級』
『特別支援学級』とは、軽度の障害のある子の特性に応じた教育を行うために設置された学級です。その地域内に特別支援学級がない場合には、別の地域であっても特別支援学級が設置されている学校へ就学することになります。
特別支援学級では『なかよし学級』などとも呼ばれますが、個別の指導計画がありそれらに基づいて専門的な知識を有している教員が指導や支援を行います。しかし、すべての時間を特別支援学級で過ごすのではなく、給食や体育、音楽など一緒に他の生徒と受けられる授業は一緒に受ける(交流級)こともあり、コミュニケーション能力も培っていけるように配慮されています。
『特別支援学校』
『特別支援学校』は地域の小学校に在籍するのではなく、特別支援学校単体に在籍することになります。特別支援学級や通級指導教室で指導する場合には、特別な資格は必要ではなく一般的な教員免許で担任を持つことが出来ますが、特別支援学校の場合には、教員免許に加えて特別支援学校の教員免許を取得することが必要です。特別支援学校は、障害がある子の自立を促したり、その子にあった教育を受けるための学校です。
このように、障害を持っている子の学習環境の選択肢は多くあります。それぞれの学級、学校にメリット・デメリットがありますのでそれをふまえた上で、学習環境を考えていくようにしましょう。発達障害がある子どもは、生きづらさを感じていたり、馴染めない環境がストレスになっていることがありますので、しっかりとその子がリラックスして通える場所を探すことが大切です。
3.地域や学校によって差があるのが現状
通級指導教室や特別支援学級などの、地域の小学校に設置されている学級の場合、通級指導教室や特別支援学級を選択できる障害の程度や、指導内容は地域の学校によって差があるのが現状です。
特別支援学級の場合には、希望する障害の特別支援学級が地域内の学校に設置されていないために、遠くの小学校へ通わなければならなかったり、指導内容に関してもその子の特性をしっかりと理解してもらえないケースもあります。その半面、障害の特性に応じた手厚いフォローやサポートを行っている学校もあり、地域のよって差があるので就学する小学校でどのようサポートを行っているのか、指導内容はどのようなものなのかを事前に調べておくことが大切です。
また、発達障害があることが幼稚園や保育園に在籍しているときにわかっている場合であれば、事前に就学相談や個人調査票などによって小学校へ特性などを伝えることが出来、最善の学習環境を提案してくれることもあります。学習環境については、子どもの特性に加えて親の意思や願いも十分に考慮してくれますので、就学相談のときに伝えていくことも大切です。
小学校は6年間通うために、しっかりと支援、サポートしてくれる学校を選ぶことが重要です。就学の前年度だと、準備物が多かったり申請する用意が間に合わないことがありますので、学校の情報収集は就学の2年前から行っていくことがおすすめです。
4.学級の選び方のポイントは?子どもにあった学級の選択が大切
小学校では長い時間学校内で過ごすことになるので、学習環境がその子にとって最適な場所であることが大切です。先程紹介したように、『普通学級・通常学級』『通級指導教室』『特別支援学級』『特別支援学校』と4つの大きな選択肢がありますが、選んだ学級がストレスを感じる場所であれば、学校自体に苦手意識が芽生えてしまったり、行きたくないと感じてしまうことになります。学習環境を整えることは非常に大切ですが、急な変化に対応しにくい発達障害の子が、パニックになったときに落ち着ける場所を確保しておくということも大切です。
学習環境とストレスを感じない場所という視点から、学ぶ方法を考えていきましょう。では、学級選びのポイント3点を紹介します。
①子どもの特性を十分に理解し、どのようなサポートが必要かを把握しておく
発達障害の子どもは、それぞれ特性があり個人差が大きくなります。ですので、同じ障害であっても同じ支援が必要とは限りません。その子の現在の苦手なことや得意なこと、どういったことが対処しづらいかなどを紙に書き出してみましょう。現状を整理することで、自然とどのような支援や配慮が必要を見出すことが出来ます。家族内で話合いを行い、現状を整理することはもちろん、保育園や幼稚園の職員・かかりつけ医の意見なども取り入れていくとよりわかりやすく客観的に把握することが出来ます。
そして、その特性に応じてどのようなサポートをしてほしいか、配慮してほしいことはなにかを箇条書きにしていき、就学前相談のときに担当教員へ相談しましょう。
②自分の地域はどのような支援があるかを知る
先程紹介したように、地域によって障害がある子どもへのサポート体制は差があるのが現状です。就学する前に、通級指導教室や特別支援学級が就学する小学校に設置されているのか、設置されていた場合、どのような支援を行っているかという情報を集めていくことも大切です。多くは自治体のホームページで掲載されていますが、直接小学校や教育委員会へ問い合わせみるとよりわかりやすいです。また、発達障害で療育に通っている場合であれば、療育機関や同じ地域の小学校に通っている先輩保護者へ相談することも1つの方法です。
地域差があるために、就学した小学校ではあまりその子にあった特性の支援をしてもらえないとわかったら、別の学区の小学校へ進学させてもらうことも地域によっては可能ですので、そちらも合わせて教育委員会などへ相談してみましょう。
また、実際に小学校へ見学しに行くことも通級の支援方法などを知るチャンスになります。話を聞いているだけでは、知ることが出来ない学級の雰囲気や支援方法なども見学に行くことで具体的に知ることが出来ます。出来る限り時間を取って学校見学をしにいくことがおすすめです。
③学級が子どもにあっているのかを考えよう
万全を体制を整えて学習環境を選んでも、実際に子どもが在籍した場合にあっていなかったということも十分に考えられます。選択肢があるものの、最終的に学級選択をするのは発達障害を持っている子ども本人ではないので、実際に学級に入ってもその子には合わないこともあります。そういったときは、別の学級に転級したり、特別支援学校へ転学することも出来ますので、ストレスを感じないで学べる環境を臨機応変に選択していくことが大切です。
一見、学習面で考えてしまいがちですが、学校生活は友達関係や充実度も非常に大切です。学習面で追いつくのが苦手でも、楽しくポジティブに生活を送ることができる発達障害の子もいれば、学習は得意であっても環境の変化や急な変更が適応しづらく混乱してしまう子どももいます。大切なことは、その子にあった支援や配慮が出来つつも、友達関係や学校生活の充実度が高いかどうかを常に考えていくことです。
このように、その子にとって個人差が大きくそれぞれ特性は異なるので、その子に適した学級なのか、ストレスを感じることがなく安心感を得ることができる環境であるかを観察、問いかけていくことが重要です。
5.まとめ
小学校へ進学するにあたって、就学先は非常に大きな選択になります。小学校でその子が落ち着いて学ぶことが出来る環境を選択することで、情緒も安定し充実した学生生活を送ることへ繋がっていきます。就学前にできる限りどのような支援が必要か、地域の小学校にはどのような学級があり、サポートや配慮をしてもらえるのかということを調べておきましょう。
就学以降は、子どもの様子を確認し子どもの意見を取り入れていくことも大切です。
最も大切なことは、子どもにとってどのような支援や配慮が必要となり、困難と感じることが少なく充実した学校生活が送れるかということです。そのためにも、通級指導教室や特別支援学級、普通学級など様々な選択肢があるということを覚えておきましょう。