アスペルガー症候群という言葉を聞いたことがありますか?アスペルガー症候群は今は自閉症の中の特徴(自閉症スペクトラム)として含まれています。では自閉症スペクトラムとは何を指すのでしょうか?今回はアスペルガー症候群の特徴と合わせて自閉症スペクトラムという考え方についても解説します。
自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群について理解することで、相手がどうしてこのような考え方をしているのか、行動をしているのかと考えるきっかけにすることが出来ます。まずはアスペルガー症候群の症状について知ることから始めましょう。
目次
アスペルガー症候群は自閉症の中の1つ
アスペルガー症候群という病名を耳にしたことがある人は多いと思われますが、現在発達障害の中でも注目されている病気の1つです。自閉症といった小さい時に診断されることが多い病気と異なり、大人になってから人間関係に悩んだり、仕事をしていて辛いことが多いなど生き苦しかったのは、アスペルガー症候群という病気の特徴だったことがわかったという人が増え話題になりました。
ではアスペルガー症候群という障害はどのような特徴があるのでしょうか?
アスペルガー症候群は、簡単に言うと『知的な遅れが見られない自閉症の1種』になります。知的な遅れや言語障害は見られませんが、コミュニケーションが苦手であったり、ある一定のものに強い興味やこだわりを持っていることが多く発達障害に当てはまります。
アスペルガー症候群を理解するためには、まず自閉症についても知識を深めておくことが大切です。子供達が障害に対して特別な意識を持つのではなく、自然に接することが出来るように正しい知識を持っておくことが大切です。
自閉症とは以前は言葉のイメージから、性格のものであったり、親の愛情不足が原因の病気という認識が少なからずありました。しかし、自閉症は生まれつきの障害になりますので、後から発症したり一時的な治療で治るものでもありません。生まれつき中枢神経系がうまく働かないことが原因ではないかと考えれらていますが、実際には現在もはっきりとした原因は解明されていません。
しかし、中枢神経系の異常により様々な症状を引き起こしたり、自閉症やアスペルガー症候群などの独特な考え方や感じ方、捉え方が形を表していることがわかっています。
自閉症の症状は3歳を基準に診断されることが多い
自閉症は生まれてすぐに病名がつくことはありません。成長をしていく上で、発達過程に沿っていっていなかったりと徐々に自閉症の特徴が姿を現していきます。
自閉症は3歳を目安に確定診断されることが多いですが、自閉症の症状が強いと1歳半程度から自閉症の可能性があると医師から告げられることがあります。自閉症やアスペルガー症候群といっても、個人差がとても大きく症状の軽さも異なってきます。しかし、自閉症の子供は以下の3点の特徴が現れてくると自閉症と確定診断されます。
【①:人と付き合うのが苦手】
自閉症の子供達は人と付き合っていくことが非常に苦手です。目を見て会話を楽しんだり、集団で一緒になって遊ぶことなどが苦手ですので、子供の時には『みんなで一緒に楽しむ』ということが難しくなります。他の人がどのように感じてしまうか、みんなが自然に守っているルールなどもきちんと伝えないと理解することがうまく出来ません。自分の気持ちや感じたことを身振り手振りを通して相手に伝えることも苦手ですので、自閉症の特徴を理解してもらえていないと誤解されることも多くあります。
【②:コミュニケーションがうまく取れない】
乳幼児期から子供達はたくさんの人と関わっていく中で、コミュニケーション能力を自然と身につけていきます。言葉を覚えて使ったり、相手が言ったことを理解して、内容にあった言葉を返すといったコミュニケーションが出来るようになりますが、自閉症の子供はコミュニケーションがとりにくくなります。言葉の発達が遅れることが多く、2歳をすぎても言葉が出なかったり明らかに年齢の発達よりも遅れていることが目立ってきます。
また言葉を覚えていっても意味を正確に理解出来ていなかったり、たくさんの意味がある言葉を臨機応変に使い分けることも難しくなります。低年齢であればおうむ返しになっていることもあり全体的にコミュニケーションが苦手で、集団の遊びや会話に入ることが少なくなります。
【③:こだわりが強く想像力が乏しい】
自閉症の子供はこだわりが強く、自分が決めたことや好きなことは何時間でも熱中することが出来ますが、ちょっとした変化に対応が出来ずパニックになったり、一度決めたことは必ず自分の中の順序に沿って行動しないと気が済まないことがあります。『もしも、こうしたら…』と先のことを考えて行動することもうまく出来ないために、こだわりが強く表れていくると考えられています。
乳幼児期にはひらひらしたものを何時間も眺めていたり、車を一列に並べ続けたりと特定の行動を繰り替えすことも多く自閉症の診断の1つの目安になっています。
このように、自閉症と診断されるには3つの特徴があります。この特徴は自閉症の子供に多く見られますが、やはり軽度の子供であればあまり目立たないこともあり、診断が遅れてしまうことがあります。
自閉症はとても幅広い特徴がありますが、自閉症の子供に多い特徴としては
・目で見たものを写真を撮るように正確に覚えている
・触られたことが強い刺激になり、叩かれたように感じてしまう
・何気ない音や声に怖がる反面、多くの人が苦手な音は平気である
・発達する能力にばらつきがある
ということも挙げられます。同じ自閉症であっても同じ特徴があるわけではなく、人によって特徴はとても差が大きくなりますので診断は慎重に行われます。
自閉症スペクトラムは明確な区切りをなくす考え方
アスペルガー症候群は自閉症の中の1つになりますが、今『自閉症スペクトラム』という言葉が浸透しつつあります。自閉症スペクトラムとは、多くの特徴があり人によって特徴の差がある自閉症を、広くとらえようという思いから作られた言葉です。
自閉症と診断される人の中には、特徴の現れ方に差があり強い人もいれば弱い人もいます。また、同じ人であっても特徴が目立つものとそうではないものがあります。知的な遅れがあることが自閉症児には多いですが、全ての自閉症の人に知的障害が伴っているわけでもありません。
このように、自閉症と言っても全ての型にはまった特徴があるのではなく、人によって特徴の差が大きい上に、強い特徴があったのにも関わらず成長していくにつれて、その特徴が目立たなくなっていく人もいます。『〇〇がある=自閉症』とはっきりと決めてしまうのではなく、はっきりと区別しきれないものを無理に分けないで、全て人としての特徴と捉えようという思いから『自閉症スペクトラム』という言葉が生まれました。以前であれば、知的障害があるから自閉症、知的障害がないからアスペルガー症候群とはっきりと分けて考えていたものを、自閉症の中の1つの特徴としてとらえることが自閉症スペクトラムの考え方です。
アスペルガー症候群の特徴6つ
自閉症の中の1つのタイプであるアスペルガー症候群の特徴は何があるのでしょうか?詳しく解説します。
【①:知的な遅れが目立たない】
アスペルガー症候群は知的な遅れはないことが多く、あったとしても軽度で目立たないことが特徴として挙げられます。そのため、学校では他の子供と一緒に通常学級で授業を受けていることが多いです。
知的な遅れが目立たないので、一見すると自閉症やアスペルガー症候群と周りが気が付かず、誤解をされたり、失敗を責め立てられ生き苦しく感じることがあります。大人になるまで自分がアスペルガー症候群だとわからない場合も多く、今は大人になってからアスペルガー症候群と診断される人も多くいます。このように、アスペルガー症候群は知的な遅れは目立たないことが多いので、周囲から理解されにくく気付かれないことも多いです。
【②:言葉の意味を理解出来ていなかったり、ストレートに言ってしまう】
アスペルガー症候群の人は年齢に沿った言葉を使うことが出来ます。中にはまだまだ子供なのに、難しい漢字をたくさん知っていたり驚くほど言葉を知っている人もいます。しかし、実際には言葉の意味を把握出来ていなかったり、2つ以上意味がある場合には全てを把握出来ておらず覚えていない可能性があります。
言葉の意味をそのまま受け取ってしまうことも特徴の1つにあります。『まっすぐ帰りましょう』と言われたら『家に帰るには角を曲がらないと帰れないよ』と答えるように、『まっすぐ』という言葉の意味は直線の意味しか覚えておらず、どこにも寄らないで、という意味は覚えていないために、このような会話のやりとりになってしまいます。他にも『どうやってここまで来たの?』と言われると、移動するのに使った電車や車を車種から色、時間に至るまで事細かく説明することがあります。1つの言葉であっても、本来であれば自然と言葉の意味付け加えて覚えていきますが、アスペルガー症候群の人はそれが難しくなり中々覚えることが出来ません。
また、先のことを想像したり相手の気持ちを考えて言葉を選ぶということも苦手で、太っている人に『〇〇ちゃんは太っているね』などと傷付く言葉をストレートに伝えてしまうこともアスペルガー症候群の特徴の1つです。特にストレートに伝えてしまうことは、学校生活や社会生活では相手に嫌がられてしまいます。
アスペルガー症候群として診断されていると、このように人との関わりが苦手という特徴があることがわかります。アスペルガー症候群の人は相手を傷つけるためにこのように話しているのではなく、先のことや相手のことを想像するのが苦手であるために、ついストレートな言い方をしてしまうのです。このように他の特徴が目立たず知的な遅れがない場合には、大人になるまで気が付かず非常に苦しい思いを強いられることとなります。
【③:1つのこだわりが強いことが多い】
自閉症と同様に、1つの事柄に関しては順番などを絶対に守るといったこだわりが強い人が多くいます。何にこだわりを見せるかは人によって異なりますが、自分が順序などを必ず守ることはもちろんのこと、相手など周りにも同じことを求めることがあり守らない場合には怒ったり厳しく注意されてしまいます。
この場合の注意をすることや叱ってしまうことは、ストレートな言葉と同じで悪気があって注意しているのではありません。アスペルガー症候群の人からすると、独自のルールを守ってもらえなかったから注意しただけで、いじわるや偉そうに言いたくて言っているのではありません。
【④:人の気持ちを汲み取ったり自分の気持ちを伝えるのが苦手】
自閉症やアスペルガー症候群の人は自分の気持ちを相手に伝えたり、相手がどのように思っているのかと気持ちを汲み取るのが苦手な人が多いです。先ほど解説したように、太っている相手にストレートに『どうして太っているの』と傷つく質問をしたり、自分がどう感じたかを伝えることが苦手ですので周りと一緒に行動するのが出来ないことがあります。特に子供時代にはストレートに伝えてしまうと、相手からも厳しい言葉が返ってきてしまいそれ以来、他の人とコミュニケーションを図るのが苦手になったり一人で行動している姿が目立ちます。このような場合には、アスペルガー症候群ということがわかっている場合であれば、クラス全体で話合いをしたり、子供同士の会話の中で『〇〇と言わないで』と言われて傷つくことを、しっかりとアスペルガー症候群の子供へも伝えていく必要があります。
【⑤:同時に2つのことをするのが苦手】
興味関心があることに関してはとても熱中する傾向がある一方で、アスペルガー症候群の人はどうしても同時に2つのことをするのが苦手になります。また、熱中すると話かけられても気が付かないくらい真剣になっていることもあります。器用に何でも同時にこなすというのは、アスペルガー症候群の人にとってはかなりハードルが高くなります。
【⑥:好きなことは何時間でも出来る】
アスペルガー症候群の人は、何時間でも繰り返して行うことが全く苦痛ではないことが多いです。記憶力がとても良い人も多く、読み書きしたり物を覚えるのが得意です。アスペルガー症候群の人は興味があることや好きなことは、長時間集中することが出来、研究者になったり、素晴らしい才能を開花させることがあります。しかし、興味がないことや自分が好きになれないことに関しては無理をしてしまうと、すること自体嫌になってしまい参加しなくなってしまいますので、気持ちを高めていくことが大切です。
まとめ
以前はアスペルガー症候群の人は、自閉症とは異なる発達障害という認識になっていましたが、現在は自閉症の中の1つの特徴として認識されています。そのため、アスペルガー症候群という名前ではなく自閉症スペクトラムと診断されることになります。
自閉症スペクトラムはとても様々な特徴があり、人によって全く異なる特徴が表れています。アスペルガー症候群の人はコミュニケーションの障害や知的遅れが目立たないなど大まかな特徴がありますが、他の特徴に関しては個性豊かです。知的な遅れが目立たない分、周りからは障害を持っていると気が付いてもらえないことが多く、生きにくい、人間関係が辛いと感じている人がいることも事実です。
アスペルガー症候群の特徴を子供達にもしっかりと伝えていくことは、相互理解の手助けとなり、アスペルガー症候群の人と一般の人が楽しく共生していくためのきっかけになります。