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ADHDと似た障害や合わせて起こりやすい障害がある
『注意欠陥』『多動性』『衝動性』の3つの特徴が現れることがあるADHD。ADHDは以前は障害として認識されておらず、わがままな性格や乱暴な子、親のしつけが出来ていない子と言われていました。しかし、実際には性格やしつけが原因ではなく、脳の機能障害が原因でこのような行動が起きてしまうことがわかりました。集中することが難しかったり、衝動的に行動してしまったり、じっとすることが苦手なADHDの人は、周りの人から理解されにくく誤解をされやすい障害ですので、障害についてしっかりと理解することが適切なサポートを行うきっかけに繋がっていきます。
また、ADHDと似た障害やADHDと合わせて起こりやすい障害もありますので、それらの特徴や違いも把握しておくことが大切です。ADHDは自閉症やアスペルガー症候群、知的障害といった障害と間違われやすく、それぞれの障害によって特徴は異なります。どの間違われやすい障害も中枢神経などの神経が上手くコントロールすることが出来ないために起こると考えられており、この神経が原因となって似た行動や特徴が現れてくると言われています。
中枢神経は体中から送られてくる刺激などの情報を処理して、体の各部分へどう行動へ移せばよいかを伝える働きがありますが、この一連の役割が上手く働かないために、注意を払ったり集中することが出来ないADHDのように特徴的な行動が現れてきます。ADHDがある人は他に合わせて障害もあることが多く、学習面やコミュニケーション能力などが難しいと感じることがあります。似た障害や合わせて起こりやすい障害を知ることで、ADHDをより深く理解することが出来、その結果ADHDの人と一緒に分け隔てなく共に歩むことへ繋がります。
ADHDと知的障害の違いとは
ADHDは知的障害と間違われやすい障害の1つです。しかし、ADHDは原則的に知的な遅れは目立たず、集中出来る環境を整えて丁寧に理解しやすく教えることで、年齢にあった学習を理解することが出来ます。では、知的障害とADHDの違いは何でしょうか?
知的障害とADHDは同じ発達障害になりますが、知的な遅れがないADHDに比べて知的障害は名前の通り知的な遅れが見られるという点が異なります。知的障害は相手の気持ちを感じ取ることが出来なかったり、計算能力や理解力は同じ年齢の人に比べると低くなってしまいます。また、自分の気持ちを表現することが苦手であったり、こだわりが強いなど特徴的な行動も見られます。
ADHDは集中出来ないなど『注意欠陥』『多動性』『衝動性』が顕著に表れるものの、知的な遅れはありません。しかし、知的障害の人もミスが多かったり周りの空気を読むことが苦手であったり、また多動性が見られることもありますので、ADHDと知的障害との区別が周りの人からすると難しくなります。同じ発達障害であるために特徴や行動が重なる部分もありますので、『多動性が強い=ADHD』と断定することは出来ません。知的障害には顕著な特徴は行動があるものの、ADHDの特徴が重なる部分があるということを理解することが大切です。
ADHDと合わせて起こりやすい障害『LD(学習障害)』
ADHDの人は約半数にLD(学習障害)があると言われています。LDは学習障害と言われ、総合的な知的な遅れは目立たないものの『聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する』という学習に必要な能力の中で、2つ以上を身につけることが難しいという特徴があります。要するに、「計算は出来るけれど、文字を書いたり読んだりすることは苦手」「本を読むことも書き写すことも出来るけれど、数の大小や繰り上げの計算は苦手」というように、不得意と得意の差が大きくなるのがLDです。 ADHDの人は集中力が持続しないことが特徴にあるので、どうしても学習に遅れが出てきてしまいます。しかし、集中出来る環境であったり、丁寧にゆっくりと説明をしていくことで、知的な遅れは見られなくなり、学習の成果が表れていきます。しかし、LDとADHDの両方の障害があると、学習面で遅れが見られることがありますので、ADHDとのLDの両方のサポートを行っていかないと学習面はどんどん遅れていってしまう可能性があります。LDの人は一人ひとり表れる症状は異なりますので、その人に対応した適切な指導を行っていくことが大切です。
また、ADHDの人もLDの人も小さい時から怒られることが多いので、自分の本来持っている能力を発揮することが出来ず意欲を失ってしまうことがあります。『どうせ僕(私)なんて…』という思考になっている可能性があるので、小さいことでも自分で行えた時にはしっかりと褒めていき、自信をつけるようにすることが大切です。
自閉症スペクトラムはADHDと間違われやすい障害の1つ
自閉症スペクトラムとADHDも間違われやすい障害の1つになります。自閉症スペクトラムとはコミュニケーションがうまく取れないことや、こだわりが強く小さな変化にでも対応する能力が弱いことや、知的な遅れがある人もいます。しかし、自閉症スペクトラムといっても今は広い意味として捉えられているので、特徴や症状も非常に個人差が大きくなります。
自閉症スペクトラムと言われているように、様々な特徴の差、知的な遅れがある人もいれば、知的な遅れが目立たないアスペルガー症候群と呼ばれる人もいます。自閉症スペクトラムの中でもアスペルガー症候群の人は自閉症特有の行動が目立たない人も多いので、ADHDの人と区別をすることが難しくなります。
ADHDとアスペルガー症候群の人はどちらも興味や関心があることに関しては非常に高い集中力を示しますが、ADHDの人の場合には『注意欠陥』という特徴があるので好きな事であっても準備などを忘れてしまうことがあります。これに対してアスペルガー症候群の人は、自分が好きなことや興味があることであれば、忘れることはまずありません。
個人差はありますが、似た発達障害であっても少しずつ特徴に違いは出てきます。このような違いは、素人ではもちろんのこと専門家でも見分けることが難しくなります。
障害を知ることは適切なサポートを受けるために必要なこと
ADHDはその特徴から、周りから叱責されたり誤解されることが多く気が付いてもらいにくい障害と言えます。ADHDの人はADHDのみだけでなくLDなどの発達障害を併せて発症していることが多くなり、その合わせて起こている障害によってサポートに仕方は変わっていきますので、まずはどのような障害でどのような特徴があるのかを把握することが大切です。
また、普段は周りから気が付いてもらえず勝手に距離を置かれてしまったり、時にはいじめに発展してしまうこともあります。その原因を周りが障害として認識することが出来ず、性格や親のせいにしてしまうと、本来であればサポートを受けて成長出来る部分が成長することが出来ず、結果自信を失ってしまい、うつ病になったり不安障害を発症してしまう可能性もあります。
ADHDの人を適切にサポートをしていき、周りや学校で協力をしてもらうためには、まずしっかりとADHDについて知ってもらうと共に、どのような行動が起きてしまうのか、どのように自分の感情を伝えてしまうのかをきちんと知ってもらうことが大切です。障害について理解することは、ADHDの人と周りの人が自然に接し楽しく生活していくためには必要不可欠と言えるでしょう。
まとめ
私たちだけの判断では見分けることが難しいADHD等の発達障害。特にADHDは知的な遅れがないものの、物忘れがひどかったり、ぼーっとしていたり、急に手が出てしまったり、教室でじっとしていられなかったりと、行動面で周りから「わがままな子」というレッテルを張られがちになります。しかし、実際にはわかっていても自分ではどうすることも出来ず、どうしても行動に出てしまいます。衝動的に手が出てしまっても、本人には悪意はなく感情を抑えることが難しいという特徴があることを理解しなければなりません。ですので、まずは周りの人達がADHDの特徴や行動について知ることが大切です。
ADHDは似た障害から、合わせて発症しやすい障害までいくつかあります。その違いを知ることで、ADHDの人と一緒に暮らす時に注意すべき点を知るきっかけになります。それぞれの障害にはそれぞれの適切な対応方法がありますので発達障害について把握しADHDと向き合うことが大切です。